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【恵庭市長インタビュー】思いの種を育み咲かせる、市民主体のまちづくり

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【恵庭市長インタビュー】思いの種を育み咲かせる、市民主体のまちづくり

恵庭市プロジェクト

取材:中村敦史 文:髙橋さやか 写真:斉藤玲子

欲しい未来はみんなでつくるまち、北海道 恵庭市。
主体的で熱意あふれる人々の力によって、花のまち・読書のまちなど、独自の取り組みを行い、人を惹きつけるまちとして成長をつづけています。

takibi connectでも、地域に根ざし活躍してきた恵庭市の挑戦者を取材してきました。今回は特別編として、市民と自治体が二人三脚で作り上げてきた恵庭市のまちづくりについて、原田 裕 恵庭市長 にお話をうかがいました。

心地よい環境で人を惹きつける恵庭の魅力

恵庭市の人口は2019年に人口7万人を突破し、その後もゆるやかに増えています。人口減少は数多くの自治体が抱える課題です。そうした中で、人々はなぜ恵庭に惹きつけられるのでしょうか。

ーーtakibi connect で取材したみなさんは、口々に「恵庭が好き」とおっしゃっていました。代々恵庭に住んでいる方もいれば、道外から移住してきた方もいます。みなさんが恵庭に惹かれるのはなぜなのでしょう。

原田:
恵庭は適度に田舎で、適度に都会という、ほど良い環境です。
大型量販店もありますし、個性的な個人経営のお店も豊富で、日々の買い物には困りません。
交通の便も良く、札幌や新千歳空港にも近いですから、コンサートや展覧会など、文化的なイベントは札幌で享受できますし、飛行機に乗って日帰りで東京へいくことも可能です。
そういった意味では非常に便利ですよね。 

さらに豊かな自然にも恵まれています。漁川の上流には雄大な恵庭岳がそびえ、紅葉の美しい恵庭渓谷もあります。恵庭はコンパクトに都市と自然が共存する環境なのです。

恵庭渓谷・白扇の滝の紅葉
恵庭渓谷・白扇の滝の紅葉

原田:基幹産業である農業も魅力のひとつです。特産品のえびすかぼちゃやお米をはじめ、アスパラやトウモロコシ、ジャガイモ・・なんでも揃います。牛乳を使ったおいしいアイスクリームやチーズ、ピザなどもあります。こうした採れたてのおいしさを味わえるのは、この上ない幸せですね。

さらに恵庭にはサッポロビールの北海道工場があります。北海道限定のクラシックビールは、ふるさと納税の返礼品としても非常に人気のある商品で、その工場が恵庭にあるというのは大変光栄なことです。

地理的条件に恵まれた恵庭市。2007年頃までは人口が増えていたものの、その後伸び悩み2011年からは自然減に。市では移住・定住などの取り組みを強化し、人口増へと結びつきました。市の取り組みもさることながら、そこには恵庭で暮らす人々の人柄も関係していました。

ーー恵庭の方と接していると、「何かに貢献したい」という思いを持っている方や、周囲との協調を大切にする方が多い印象があります。

原田:
恵庭は古くから自衛隊のまちで人の往来があることから、転入してきた方達をあたたかく迎える風土があります。転入してきた方は、また別の土地へと移っていく方も多いですが、恵庭に定着する方も多くいらっしゃいます。常に人の動きがある、流れのあるまちだと思いますね。

そうした“人の流れ”というバックグラウンドがある中で、志をもった方が恵庭に訪れ実際に形にされる、そういった事例も多い印象です。花のまちの礎を築いた内倉さんもその1人です。

恵庭駅通にある緑と語らいの広場「えにあす」には、 市民活動をしている団体の活動拠点である市民活動センターがあり、非常に多くの市民活動団体に登録いただいています。料理教室や伝統文化の教室、町内会の会合など、みなさん活発に活動されていますね。

地元の人が市外から来た人たちを受け入れる素地があり、それぞれが生き生きと活動する。そういった環境が、新しい挑戦が生まれる土台になっているのではと、私は思っています。

明治時代から紡がれてきた挑戦のまち

「恵庭の歴史は挑戦者によって支えられてきた」と語る原田市長。令和3年 恵庭市議会第4回定例会で発せられた原田市長の所信表明には、現在も花のまち恵庭を支える歴史の一旦が記されています。

昭和36年元旦。京町在住の佐藤精一郎宅に雄物川会のメンバー7人が集まった。全員秋田県雄物川町出身である。毎年、正月は皆が集まって酒を酌み交わしながら、故郷の話に花を咲かせていた。(広報えにわシリーズ「恵庭の歴史を歩く」から。) 第ニの故郷恵庭の町を秋田の故郷のような美しい環境にしたい。佐藤はその思いを仲間に伝え、7日後の1月8日には設立総会を開いている。今年60周年を迎えた花いっぱい文化協会のはじまりである。

原田:恵庭市がまだ恵庭町だった頃、町立の農業高校がありました。当時恵庭周辺の多くの土地が田んぼで米作りが中心。「花で飯が食えるか?」という時代でした。そうした中で園芸科出身の卒業生が、園芸作物を作り商売にしようと、花き栽培をはじめたのです。

さらに彼らは「恵庭を花で飾られた花のまちにしよう」と、後年ニュージーランドへの視察旅行へと出かけました。 クライストチャーチで素晴らしい庭を目の当たりにし、「こんなまちにしたい」と感じ、考え、行動に移したのです。花苗のあっせんや道路公園での花檀造成、花壇コンクールなど活動の幅を広げながら、現在も花のまち恵庭を支えています。 

1990年に行われた第1回恵庭・花とくらし展 (写真提供:内倉真裕美さん)
1990年に行われた第1回恵庭・花とくらし展 (写真提供:内倉真裕美さん)

原田:そうした活動に触発され、恵み野では「恵み野花づくり愛好会」が結成されました。 20〜30年経つと古くなってしまう団地を花によって彩り、時がたっても美しい団地を維持しようと考えたのです。ここでも、始まりは主体的な市民の手によるものでした。 

花のまちづくりは拡大発展し、「都市景観大賞」や「緑の都市賞」をはじめ数々の受賞を重ねながら「花のまち恵庭」の名は全国レベルに達しました。ガーデニングの見学に他の地域から人が訪れるという好循環が生まれてきたわけです。

「花のまち恵庭」はそうして歴史を紡いできました。

さらに歴史を遡ると、明治の開拓者こそが挑戦者です。本州から北海道に来て、うっそうとした
原野を切り開き、種を植え、収穫し、暮らしを築いた人々です。未開の地を切り開いた挑戦者によって、このまちは成り立っているのです。

ーー 花のまちに関する取り組みをはじめ、ブックスタートなど恵庭市では挑戦が人の繋がりを生んでいるところが素晴らしいなと感じます。

原田:
挑戦する人、情熱を持って何かをやろうという人たちは、活動的でさまざまな人を巻き込んでいく力を持っています。その力に周りの人は魅せられていくのではないでしょうか。おそらく花も読書も、中心に熱い想いを持った人たちの力が、周囲に波及していったのかと思います。

今でも図書館では傷んだ本を直したり除籍本を販売して、貴重な本の購入につなげるなど、地道な活動を行うボランティアの方がたくさんいらっしゃいます。そういった素晴らしい方達のおかげで成り立っています。

原田:2022年に開催された全国都市緑化フェアは、市民主体の花のまちとしての取り組みが30年以上にわたって積み重ねられてきたからこそ開催できました。

緑化フェアはこれまで、政令指定都市など人口規模の大きなまちでの開催でした。恵庭のように人口7万人のまちが全国都市緑化フェアを開催するのは、初めてのことだったのです。

なぜできたのか? 約60年にわたる「花でまちを綺麗にしよう」という市民による活動の土台があったからこそです。それは非常にありがたいことだと、私は感じています。

2022年に行われた全国都市緑化フェア
2022年に行われた全国都市緑化フェア

ーー意欲的な気質の方が恵庭には多いということなのでしょうか。

原田:
「まちをきれいにしたい」「困っている人を助けたい」といった気持ちは、多くの人が心の内に持っているものではないでしょうか。 ふとしたきっかけで、その思いが動き出すということなのでしょう。

後押しする仕組みで育まれ、花開く

市民が主体となり数々の挑戦によって育まれてきた恵庭市。13年ほど前からは恵庭市独自で挑戦を後押しする取り組みも行われています。

原田:
恵庭市独自の起業塾を13年ほど前から開いています。毎年約30〜40名が受講し、開業事例もたくさん出てきています。開業資金の一部を市が補助する仕組みもあり、挑戦する人たちを育て、サポートする取り組みを行っています。

ーー挑戦を後押しする仕組みが整っているのですね。

ーー市民の方から「恵庭をこんなまちにしたい」と湧き上がってくるのは、素晴らしいなと感じます。

原田:
ちょうどいい規模というのはあるかもしれないですね。大都市では地区ごとに「子育てしやすい・安全なまちにしよう」という取り組みはあると思いますが、全体となるとまた動きが変わってくるでしょう。

恵庭の規模であれば、「こんなことやろう」と言ったら「いいんじゃない」と動き出す可能性は大きい。アイディアを考え、挑戦するとそれに跳ね返ってくる。 ほど良い規模のまちかもしれないですね。

ーー主体的な大人の姿を見て育つと、子どもたちも「自分の描いたものって叶うんだ」と感じられそうです。

原田:
そうですね。スポーツ少年団など、子どもたちが一生懸命活動をしていると、そこに自然発生的に親の会ができ、コミュニティ活動が生まれます。それもまちづくりの1つです。やりがいが感じられるまちを目指していきたいですね。

ーー最後に今後の展望や構想などについて教えてください。

原田:せっかく花のまちとして、全国都市緑化フェアも実施しましたから、次の世代へと繋がる取り組みをしていけたらと構想しています。
ふるさと納税でも寄附使途として、子育てや農業振興などさまざまありますが、恵庭と言えば、ガーデンデザインプロジェクト(水と緑と花のまちづくり事業)です。美しいまち、住み良いまちを作るためにと、寄附使途を選んでくださる方たちには、大いに感謝しております。

いつでも花の相談ができたり、花のイベントができる「花のセンター」のような場所をつくれたらいいですね。市(行政)主導ではなく、市民のみなさんのアイディアを取り入れながら、作り上げていく。ボランティアの方々もそこに集うことができれば、生き甲斐のある市民の憩いの場を作っていけるでしょう。

私が思い描くような恵庭にしたい、ということはこれっぽっちも思っていません。市民のみなさんが「こんなまちにしたい」「こんなまちに住みたい」と思い描くことを、行政が手助けしながら形にしていきたいですね。

職員との距離が近く、ご自身の言葉を大切にされているという原田市長。取材と撮影の合間には市民の方から相談を受ける場面も。市長自らが市民に寄り添うからこそ、叶えられてきた二人三脚のまちづくりなのだと感じました。

恵庭市はこれからも、市民から湧き出る思いの種を育み咲かせていきます。

恵庭市よりご案内

【ふるさと納税・選べる使い道】
恵庭市ふるさと納税では、使い道を指定しない“市長におまかせ”を除き、寄附者様の意向を反映できるよう7つの使い道から選択することができます。
その中の一つとして、花と水と緑に彩られた都市環境づくりの項目もあります。

「2 水と緑と花のまちづくり事業」
恵庭市は花と水と緑に彩られた都市環境づくりに積極的に取り組んでおり、毎年、個人の庭を開放したオープンガーデンには全国各地から見学者が訪れています。今後も恵庭の恵まれた自然環境、水資源、景観を活かしたまちづくりを進めます。

新たな花の拠点となる公園整備
花のイベント開催
公園・緑地の整備と管理など

その他、6つの使い道や事業実施報告もぜひご覧ください。