ジェラテリアジジからのお知らせ。
より健康的で自由な環境を目指して
お知らせ
文:髙橋さやか 写真:斉藤玲子
2024年4月ジェラテリアジジと契約牧場の水本牧場では、放牧乳製品生産基準認証・放牧酪農乳製品生産基準認証を辞退することになりました。背景には世界情勢や円安による影響が。酪農家と牛たちがより健康にすごし、良質な生乳を生産する環境を整えようとの判断です。ジェラテリアジジで統括マネージャーをつとめる、太田 裕也さんにお話をうかがいました。
牛にも人にも、ストレスフリーな環境を
ーージェラテリアジジの売りだった、放牧乳製品生産基準認証・放牧酪農乳製品生産基準認証を辞退することになりました。決断にいたった背景を教えていただけますか?
太田:みなさんニュースなどでご存知の通り、ここ数年の世界情勢や円安の影響で、食材や資材の仕入れ価格が上昇しています。お取引先の酪農家さんも、ギリギリまで経費の削減をおこなって牧場の維持を目指してきました。しかしながら、価格の上昇が予想以上に長期にわたること、少人数での放牧酪農の継続が難しいという判断から、「放牧畜産認証」を辞退することになったんです。「酪農家さんにとって健全で持続可能な経営」を最優先しての判断でした。
ーー酪農家さんにとって健全で持続可能な経営を最優先したのですね。
太田:放牧認証は本来低コストで、「牛たちにストレスのない飼育を」が大前提です。ただその前提は、大規模な放牧酪農をおこなった場合に成り立つもの。 放牧酪農では最低でも学校のグラウンド5個分ほどの放牧地が必要になってきます。
水本牧場さんは家族3人で約100頭の牛を育てている、小規模な放牧酪農。牧草地を管理するだけでも、肥料代や燃料代などさまざまなコストがかかり、人的負担も大きくなっていたそうです。さらに世界情勢や円安の影響を受けて、コストはこれまでの3倍・4倍にも膨れ上がってきたんです。
加えて昨年(2023年)の猛暑では、乳牛が夏バテを起こして食欲が落ち、搾乳量がものすごく落ちてしまったんです。放牧は“自然で自由”な分、場合によっては乳牛が栄養失調を起こすことも。牛たちにも、大きな負担がかかっていた面もあるんですよね。
今回放牧認証を手放すことによって、酪農家さんの負担削減と、牛と人、双方にとってストレスフリーな環境の整備を目指しています。
ーー放牧から牛舎での管理に切り替わることで、ジェラートの品質に影響はないのでしょうか?牛へのストレスや飼料も気になります。
太田:飼育方法は変わりますが、水本牧場さんの生乳であることに変わりありません。 恵庭の風土に育まれた生乳だからこそできる、ジジのジェラートの味も同様です。
僕らが 1番大切にしたいのは、「地元・恵庭の牛乳を使う」ということ。
他の地域にある牧場から「放牧認証の牛乳を使いませんか?」というお声がけもいただきますが、僕たちの大前提は「フレッシュな生乳を毎朝絞って提供したい」という思い。そこの軸は絶対にブレずに大事にしていきたいところです。
水本さんとは16年間一緒に歩んできて、今も変わらず、毎朝生乳を絞りにいってます。
「こだわりがなくなった」ということではなく、地元の生乳を大切に使い、持続させていきたい。そのために「生産面でも互いに支え合う関係を築くための選択」と、受け取ってもらえるとうれしいですね。
実は放牧を手放すことのメリットもあるんですよ。
まず酪農家さんは、牛たちにより集中できるようになります。ケアが行き届くので、牛たちのストレス軽減にもつながります。
飼料管理することによって、生乳の成分も安定するんです。
これまで夏から秋にかけての放牧期間は、乳牛は牧草をメインで食べていたので、夏場は乳脂肪が軽く、冬場は濃いのが特徴でした。これからは年間を通して、安定した生乳の味が提供できるようになるんです。
太田:物価高騰や円安の影響を大きく受けているのって、一次産業だと思うんですよね。
理想は保ちつつ、現実との折り合いをつけていかないと、事業や生活がなりたたないのが現状。地元で連携することによって、今を乗り切っていきたい。今回はそのための選択です。
ーー支え合って、変わらずおいしいジェラートを届けるための選択なのですね。
太田:今後は水本牧場さんと、飼育管理の共有も密にしていきます。関わりが深くなることによって、細かな気遣いも可能になりますし、より品質の良い安全安心なジェラートづくりが進められそうです。
「搾りたての生乳を使うこと」「空気を多く含ませ、原料を手詰めすることによって、ナチュラルな口溶けを実現すること」「オーダを受けてから、新鮮な状態のジェラートのみを製造発送」はこれまで通り。
放牧からは一旦離れますが、酪農家さんにとって幸せな環境を整え、今まで以上に愛のこもった生乳を活かしたジェラートをつくっていきます。