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白石温麺を「宮城の代表麺」に。競合4社が肩を組む白石温麺応援団

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白石温麺を「宮城の代表麺」に。競合4社が肩を組む白石温麺応援団

白石市事業者の想い

文:高木真矢子 写真:阿部一樹

体調を崩した日、何なら食べられるだろう——。そんなとき、宮城県・白石の人々がそっと鍋に落とすのが、長さ9センチの白石温麺(うーめん)です。油を使わず、胃にやさしい白石温麺。江戸時代、病の父を想う息子の親孝行から生まれたこの麺は、400年ものあいだ、この街の食卓を支えてきました。
かつてはライバル同士だった製麺会社が、垣根を越えて結成した「白石温麺応援団」。結成からの歩みと、その先に見据える未来について、株式会社きちみ製麺の木村敦さん、はたけなか製麺株式会社の佐藤祐二さん、白石興産株式会社の古川健太さんにうかがいました。

写真左から、株式会社きちみ製麺の木村敦さん、株式会社はたけなか製麺の佐藤祐二さん、白石興産株式会社の古川健太さん
写真左から、株式会社きちみ製麺の木村敦さん、株式会社はたけなか製麺の佐藤祐二さん、白石興産株式会社の古川健太さん

「仲が悪い」と言われ続けた業界

宮城県白石市内で白石温麺を手がける製麺会社は5社。きちみ製麺、白石興産、松田製粉、佐藤清治製麺、はたけなか製麺は、得意分野で棲み分けながらも、スーパーの限られた棚をめぐっては、真正面からぶつかる間柄です。

佐藤:消費者に一番近く、手延べに強いのがきちみ製麺さん。製粉の古参が白石興産さん。飲食店を営む佐藤清治さん、水車製粉を源流として乾物も手がける松田製粉さん。うち(はたけなか製麺)は流通・小売に特化して、それぞれ棲み分けしてきました。
地元・白石なら各社の商品が並びますが、仙台や県北では「温麺は2、3種類でいいよ」、東京だと「1種類でいいよ」。そうなると、しのぎを削るライバル同士です。

そこに、歴史の影も重なります。40年ほど前のこと、全国紙に業界の不和が書き立てられて以来、幾度も「仲の悪い業界」として取り上げられてきました。加えて、はたけなか製麺だけが業界の組合に入っていないことも、不和の要因の一つに捉えられていたのです。

佐藤:
傍目にはいがみ合っているように思われていましたが、中にいる私たちは、それほど仲の悪さを感じていなかったんです。

木村:過去に不和につながるさまざまな経緯があって、当時は解けないまま残ってしまったんですよね。今みたいにLINEがあったら「あ、そういうこと?」で終わるような小さな誤解の積み重ね。
一般の方はそれを知らずに、記事で「え、そうなの」と。昔は組合で流し温麺や夏祭りなどの交流もありましたが、コロナ禍で途絶えてしまいました。

一通の呼びかけから、応援団結成へ

転機は2023年。白石興産の当時の社長・和田一衛さんが「白石温麺の勉強会をやりませんか」と、市内の温麺事業者に声をかけたのです。
 
ーーどんな集まりだったのですか?
 
佐藤:
和田さんが自己紹介のあと開口一番に言ったんです。「白石温麺は認知度も低いし、なかなか普及していない。せっかくいい商品なのに、普及するにはどうしたらいいだろうか」と。
さらに「白石温麺が安売り市場になってしまい、稲庭うどんのような価格を保てなくなったのは、原料を供給してきたうちにも責任がある。白石温麺のこれからのために、みんなで一緒に考えよう」とおっしゃって、賛同したいなと思ったんです。

勉強会のあと、同年代の数人で食事に行き「今後、面白いことができたらいいよね」と連絡先を交換。グループLINEから「白石温麺応援団」が生まれました。

それぞれの法被も個性が光る
それぞれの法被も個性が光る

ーー結成後はどのような活動をおこなったのでしょうか?
 
佐藤:白石市内の屋内遊び場「こじゅうろうキッズランド」で施設長を務める、「あきらちゃん」が声をかけてくれて、キッズランドで開かれた「うーめん応援団と遊ぼう」が、応援団としての初舞台でした。
 
木村:最初はあきらちゃんに言われるがまま引っ張られていったんです。ステージの上で、あきらちゃんが考案した、うーめん体操を踊って、各社の商品を配って。実は応援団の名付け親もあきらちゃんなんです。

佐藤:「応援してほしいのに、俺らが応援団?」と疑問に思いながら、ずっとやってるんですよ(笑)。
キッズランドでのステージ出演後は、市と連携した保育園での普及活動へと広がりました。活動を通して、皆さんが温かい目で「温麺業界、まとまったんだな」と受け止めてくださるようになり、テレビや新聞にも取材いただく機会が増えましたね。

白石温麺応援団のメンバー(後列)とあきらちゃん(前列左)(2025年11月13日)
白石温麺応援団のメンバー(後列)とあきらちゃん(前列左)(2025年11月13日)

ライバルは、隣の会社じゃない

応援団にはやがて松田製粉が加わり、4社体制に。一見和やかな活動の背後には、人口減少と贈答文化の縮小という現実があります。かつての4万人だった白石市の人口は、3万人を切るまでに減少。温麺業界の主力だったギフト需要は年々減り、業界全体の売上も、かつての10億円超から6億、5億円台へと落ち込んでいました。
 
ーー応援団として協力しあう仲とはいえ、対抗意識が消えるわけではないですよね?
 
木村:意識はしますよ。でも、僕はずっと「そこじゃないな」と思っていたんです。
ギフト売り場で温麺のライバルはどこかといえば、牛タンであり、笹かまぼこであり、萩の月なんですよ。市内の競合他社がどうこう言っている場合じゃない。全国の人にとって、白石は残念ながら「どこ?」「温麺、何それ?」の世界なんです。
だから、白石温麺が目指すのは「宮城の代表麺」。どこか一社だけ売上が増えても意味がないと思うんです。

国内約1000億円の乾麺市場のなかで温麺はニッチな存在。流通も関東から中部あたりまでで、その先の店頭にはほとんど並びません。けれど裏を返せば、伸びしろは十分。「知名度不足は、ある意味チャンス」と木村さんはいいます。

温麺業界の先行きが懸念される中、2023年、テレビの人気番組で白石温麺が特集され、大きな起爆剤に。きちみ製麺会長の「ハートフルヌードル(温かい心の麺)」というひと言が話題を呼び、各社に問い合わせが殺到。売上が回復したのです。
 
佐藤:「業界内のどこか一社がメディアに取り上げられれば、温麺全体の情報が出て、底上げになるし、自分のところにもおこぼれが来る」ーー木村君のその考え方に、数字がついてきたんです。だったら「はたけなかを売ろう」じゃなく、「うーめん」という名前で発信していこうと、捉え方が変わっていきました。

応援される側になり、次の100年へ

4年目を迎えた応援団の活動は年々広がっています。地元の物産施設での「製麺会社の食べ比べセット」販売やお祭りへの出店。文化庁の「100年フード」にも認定され、東京での販売会も開催しました。

「おもしろいし市場」の周年イベント(木村さんの Facebookより)
「おもしろいし市場」の周年イベント(木村さんの Facebookより)

佐藤:会社だと費用対効果を考えて二の足を踏むことも、応援団だと「これちょっとやってみない?」で簡単に動けるんです。

木村:他社が新商品を出すからテレビ局が来る、そこに応援団みんなで駆けつける。

佐藤:お互いの工場を見学しあうこともあります。競合だからこそ、「調子どう?」のひと言で分かり合える関係性がありがたいですね。

ーー応援団として、これからどんなことに挑戦していきたいですか?
 
古川:もっと多くの人に温麺のおいしさを広めていきたいですね。
私は秋田出身で、入社するまで温麺よりも稲庭うどんの方が身近でした。営業先では今も「温麺って、そうめんの短いやつでしょ」と言われますが、「いえ、そうめんも美味しいですけど、温麺はそれ以上に美味しいです。油を使っていないから、お子さんにもご年配の方にも食べやすいんです」と伝えて回っています。
 
木村:僕らが表に出ていくんじゃなくて、いずれは「応援される側」になりたいですね。全国にいる温麺好きの方に「うーめんアンバサダー」になっていただいて、応援団1号、2号と増えていく。僕らは事務局として協賛しながら、自発的に広まっていく存在になるのが理想です。

佐藤:温麺は「温かい心の麺」。9センチで食べやすく、油を使っていないので胃にやさしい。私自身、コロナにかかって何も食べられなかったとき、本当に温麺に助けられました。夏に冷たくしてもおいしいんです。食欲のない日にこそ、ぜひ試してほしいですね。

木村:なにせ親孝行から生まれた麺ですから、ぜひ大切な人に食べさせてあげてほしい。タレを工夫すればパンチの効いた食べ方もできます。さまざまな味わい方を楽しんでほしいですね。
 
取材の間じゅう、掛け合いは止まりませんでした。互いをからかい、補い合い、気づけば相手の会社の自慢をしている。かつて「仲が悪い」と書かれ続けた業界の新たな世代が塗り替えた景色がそこにはありました。
目指すのは「宮城の代表麺」。
400年受け継がれた温麺を「100年後に届ける」という思いはひとつに重なります。

Information

白石温麺応援団(株式会社きちみ製麺/白石興産株式会社/はたけなか製麺株式会社/株式会社松田製粉)

宮城県白石市

株式会社きちみ製麺
〒989-0275 宮城県白石市本町46
TEL : 0224-26-2484/FAX : 0224-26-2493

白石興産株式会社
〒989-0208
宮城県白石市字大畑一番1の2
TEL : 0224-25-3101

はたけなか製麺株式会社
〒989-0276 宮城県白石市大手町4-11
TEL : 0224-25-1313

株式会社松田製粉
〒989-0231
宮城県白石市福岡蔵本字樋ノ口16-1
TEL : 0224-25-5121

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