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【ニセコ町長インタビュー】対話の力で築く、暮らしとリゾートが循環するニセコの未来

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【ニセコ町長インタビュー】対話の力で築く、暮らしとリゾートが循環するニセコの未来

ニセコ町プロジェクト

文:高橋さやか 写真:斉藤玲子

世界的なリゾート地として名を馳せる北海道ニセコ町。その一方で、足元では住宅不足や地価高騰、人手不足といった、暮らしにまつわる課題がつのっています。
魅力をさらに高めながら、地域で暮らす人々の実感ある豊かさをどう育てていくのか。
2025年10月に就任した田中 健人町長は、民間で培った経験を武器に、地域との対話を重ねながら、まちづくりを前へ進めています。
挑戦の原点とニセコの未来像について、お話をうかがいました。

対話から生まれた使命感

「人の話を掘り下げて聞くのが好きなんです」と語る田中町長。20代で起業し、経営者としてクライアントの声に耳を傾け、想いをかたちにしてきました。官民連携のまちづくり事業「ニセコミライ」を通じてニセコ町に深く関わり、地域住民との対話を重ねる中で町が抱えるリアルな課題を目の当たりにしたといいます。
 
ーーニセコ町に関わるようになったきっかけを教えてください。
 
田中町長(以下、田中): 2018年から、まちづくり会社「株式会社ニセコまち」の取締役として、持続可能なまちづくりを目指す官民連携の事業「ニセコミライ」に、基本構想の段階から関わってきました。
 
株式会社ニセコまちの立ち上げでは、町民のみなさんと40回もの意見交換を重ね、「ニセコミライ」着手にあたっても、まちづくり町民講座で議論しました。まちづくり町民講座は、役場職員や有識者等が講師役となって、まちづくりのテーマを町民と議論する場。「住民自治とはこういうことか!」と非常に感銘を受けましたね。
 
対話の文化は、ニセコらしさそのものだと感じています。

田中町長が基本構想から携わった新しい街区「ニセコミライ」のイメージ図。内閣府の自治体SDGsモデル事業にも選定された。
田中町長が基本構想から携わった新しい街区「ニセコミライ」のイメージ図。内閣府の自治体SDGsモデル事業にも選定された。

ーー外部から関わっていた立場から、なぜ町長に立候補しようと思われたのでしょうか。

田中: 地域の方々と対話を重ねる中で、ニセコ町が抱える課題を目の当たりにしたんです。さらに、半分は民間・半分は行政という立場でニセコ町に関わる中で、どうしても外からでは関われる範囲に限界があると感じていました。

「ニセコのみなさんに育てていただいた」という感覚も大きいですね。外から来た私を温かく受け入れてくださる方が多く、実際に暮らし対話する中で、改めてニセコのポテンシャルに気づかせてもらったんです。

そうした中で、自分がリーダーとしてより良いまちづくりを牽引し、恩返しをしたいと考えるようになりました。

7年にわたるみなさんとの対話からいただいたヒントを整理し、「7つの挑戦」というかたちにまとめ、今はその挑戦を軸に、まちづくりを進めています。

田中町長が掲げる、まちづくり基本理念「対話からまちの未来を 7つの挑戦」
田中町長が掲げる、まちづくり基本理念「対話からまちの未来を 7つの挑戦」

対話から生まれた使命感

世界に知られるリゾート地として発展を続け、人口5,000人ほどの町に年間約160万人が訪れるニセコ町。その一方で、地域に暮らす人たちのあいだでは、「住みにくさ」を感じる声も。田中町長がいま向き合っているのは、そのギャップをどう埋めるかという問いです。

ーーニセコ町に関わる中で、見えてきた課題について教えてください。

田中:行政、医療、課題は多岐に渡りますが、スノーリゾートとしてのブランド力や知名度が確立されている一方で、外から見た華やかなイメージと、実際に暮らす人々の「暮らしの実感」のギャップが大きくなっていることが、一番の課題だと感じています。

地域の方々の話を聞くと、「まちの活気が徐々に薄れている」「住宅が足りない」「土地が高くなった」「働き手が足りない」といった声が上がってきます。観光の盛り上がり自体は非常にありがたく、素晴らしいことですが、暮らしとのギャップが開いていくと、ニセコ本来の魅力が失われてしまう。どこかのタイミングで衰退につながる可能性もあると思っています。

だからこそ、このギャップを埋めていきたい。それが私の出発点です。

ニセコ町の未来を考える対話集会の様子
ニセコ町の未来を考える対話集会の様子

ーー観光地としての発展と、地域の暮らしやすさを両立させるのは簡単ではないですよね。
 
田中:そうですね。ただ、地域あっての観光ですし、地域あってのリゾートですから、リゾートの存在が地域の方々の恩恵にもつながるようにしていきたいですね。
住民自治の町・ニセコだからこそ、地域が一体となって住みよいまちづくりに取り組み、豊かさが循環する仕組みへとアップデートできる可能性を感じています。
 
不動産価格の急激な上昇を行政だけで抑えるのは難しいですが、住宅不足に対しては公営住宅や町営住宅といった供給施策を検討していますし、宿泊税や観光振興による好循環づくりも進めています。
 
「暮らしにくい」という声を真摯に受け止めながら、住みやすく、魅力あるまちづくりをどう進めるか。そこは日々対話を重ねながら、試行錯誤しているところです。

若さはハンデか武器か

34歳という若さでの町長就任。若さゆえの苦労もあるのでは?と想像しますが、「初めて」の連続の日々で、田中町長は若さをハンデではなく、挑戦の起点にしていました。
民間出身ならではの視点と対話を生かしながら、役場の組織や地域との関係性を少しずつ更新しています。
 
田中: 職員とは、たくさん対話をしています。
 
私自身、行政については知らないことが多いですから、「なぜやるのか?どんな意味があるのか?」と職員に問いを立てています。そうした中で、「改善点やブラッシュアップのポイントに気づくきっかけになった」という声を職員からもらうことも。
外から来た人間だからこその視点が、気づきにつながりやすいのかもしれませんね。
 
ーー町長として本格的に関わるようになって、外から見ていたニセコとの違いを感じることはありますか。
 
田中: もちろん、入庁してから抱いたギャップや、当初の目論見との違いは大なり小なりあります。ただ、役場の職員は本当に日々全力を尽くしていると感じますね。そのうえで、方針を掲げてはっきり意思表示をすることや、現場の声を丁寧にヒアリングしていく部分には、まだ伸びしろがあると感じています。
 
就任の挨拶では、挑戦することの大切さを説き、挑戦する人を応援する組織を目指したいと伝えました。

田中: 私自身、会社経営や株式会社ニセコまちでの経験がありますが、自治体も会社も、情報を集めて方針を決め、目指す方向を示しながら日々の課題解決をしていくという意味では、組織マネジメントの本質は共通していると思うんです。
 
ーー民間出身だからこそ生きている視点はありますか。
 
田中: 民間の立場に立った考え方は、経験が生きやすい部分かと思います。
例えば、民間企業との関わりについて、私は“パートナー”だと捉えているんですよね。地域の課題解決や魅力発信を一緒に考え、協働する相手。そう思えば、伝え方も関わり方も変わってきます。
 
職員にも現場の声を拾う大切さや、何気ない会話の中に本質的な課題が隠れていることを感じてほしいので、地域に出るときには必ず職員と同行するようにしています。地域や民間との連携が、もっと自然に、もっと前向きに進むような働きかけは意識しているところです。

7つの挑戦で、ニセコ型モデルをつくる

田中町長が掲げる「7つの挑戦」で目を引くのが「稼ぐ力」を育てることです。理想を実現するには、挑戦を支える財源が欠かせません。
 
ーー7つの挑戦の中で、いま最も力を入れて取り組みたいことは何でしょうか。
 
田中: ふるさと納税ですね。これは、民間で培ってきたマーケティングや利益を上げる力にもつながる部分です。
単に財源を確保するだけではなく、ニセコの魅力を知っていただき、応援していただく入り口になると考えています。ふるさと納税を通じて「応援したい」「もう一度行ってみたい」と思っていただけたら、それがまちへの投資につながっていく。そこから、暮らしや福祉、子どもたちの環境整備といった次の挑戦にもつなげていけるはずです。

“稼ぐ力”に掲げる背景には、ニセコ町が抱える複雑な事情が絡んでいます。税収は伸びている一方で、これまでの大型公共事業の影響もあり、難しいバランスにあるそう。財政の圧縮だけではない突破口を模索しています。
 
田中:ニセコは今も、人口や産業、交流人口、観光人口が増え続けている、成長過程にあるまちです。だからこそ、まずはしっかり稼ぐ力をつけ、並行して支出も見直していくことが必要。宿泊税や土地、使われていない学校施設の貸し出し使用料など、40〜50年前から変わっていない部分の見直しも進めています。
 
暮らしのギャップを埋めるためにも、将来のためにも、必要な投資はしていかなければいけない。無駄はそぎ落としつつ、歳入のトップラインを上げていきたいですね。
 
ふるさと納税を通じてニセコに投資していただくことが、町民だけでなく、そこから生まれるさまざまな挑戦を社会に還元していくことにつながる。そんな循環を実現できるまちになれたらと思っています。

魅力の原点「人」を起点に、新たなモデルを

対話を重ねながら、観光と暮らしのあいだに橋をかけていく。その挑戦の先に田中町長が見ているのは、数字や制度だけでは測れない、この町の本質的な魅力です。
ーー今後の展望を教えてください。
 
田中:いまニセコが抱えている課題は、これから先、日本各地でも顕在化していくものだと思っています。だからこそ、ニセコで解決できたことは、ほかの地域にも還元できる可能性がある。ニセコで生まれた挑戦が、社会全体にとってのヒントになるような、モデルをつくっていきたいですね。

ーー最後に、田中町長が思うニセコ最大の魅力を教えてください。

田中:ニセコの魅力の原点は「人」だと思っています。
ニセコの人々が築いてきた住民自治の歴史もありますし、有島武郎の「相互扶助」というレガシーもあります。美しい景観を守ってきた人がいたからこそ、今につながる価値がある。紡がれ、磨かれ、守られてきたものが、この町にはあるんです。

ニセコの魅力を伝えるのは、いつも「人」なんですよね。

華やかなリゾートと、その足元にある日々の暮らし。ふたつをつなぎ、循環させていく田中町長の挑戦は、まだ始まったばかりです。

世界に開かれた観光地でありながら、暮らす人たちにとっても誇れるまちであり続けること。その未来を支えるのは、制度でも開発でもなく、まずは人と人との対話なのかもしれません。若き町長が掲げる「7つの挑戦」は、ニセコというまちの可能性を、次のステージへと押し上げようとしています。

Information

ニセコ町よりご案内
 
【ふるさと納税・選べる使いみち】
ニセコ町では、ふるさと納税寄附金を下記の11つの使い道から、寄附申出の際に選択することができます。平成30年4月1日からは寄附金活用の事業を拡大し、より多くの皆様の意見を反映できるよう進めております。
 
1.森林資源の維持、保全及び整備に関する事業
2.環境の保全及び景観維持、再生に関する事業
3.自然エネルギー及び省エネルギー設備の整備に関する事業
4.有島武郎に関する資料の収集及び有島記念館に関する事業
5.住民自治の醸成又はコミュニティの推進に関する事業
6.教育、スポーツの振興及び子育て環境整備に関する事業
7.住民福祉及び生活環境整備に関する事業
8.NPO及びボランティア組織の活動に関する事業
9.産業振興に関する事業
10. その他まちづくりに関する事業
11. 町長が特に指定する事業(ニセコ国際高校の教育環境整備支援事業)
 
事業実施報告もぜひご覧ください。

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