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羽幌町

酪農王国から極上の味わいを。スノーロイヤルアイスクリームと雪印の軌跡

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酪農王国から極上の味わいを。スノーロイヤルアイスクリームと雪印の軌跡

羽幌町事業者の想い

文:三川璃子 写真:飯塚諒

昭和天皇・皇后両陛下に献上されたアイスクリーム「スノーロイヤル」をご存知ですか?
北海道の雪のように真っ白で、ふわっとした口溶け。まるで生クリームを食べているかのように濃厚ながら、どこか懐かしさを感じる味わいです。

1968年(昭和43年)の誕生以来、永きにわたって愛される「スノーロイヤル」と、株式会社雪印パーラーのあゆみについて、常務取締役の熊谷秀樹さんにお話をうかがいました。

2年の試行錯誤を経て生まれた“最高”のアイスクリーム「スノーロイヤル」

「スノーロイヤル」は1968年(昭和43年)におこなわれた北海道百年式典に際し、宮内庁から依頼を受け、雪印乳業(現・雪印メグミルク)が手がけたアイスクリームです。開発に2年を要したというアイスクリームは、どのように生まれたのでしょうか。

熊谷:
宮内庁からのご依頼をいただいた当時は、アイスクリームといえば雪印がトップブランド。試行錯誤の上に生み出された数多くの商品がありました。
加えて皇室の方々とはかねてからご縁をいただいていたのです。皇室の方々は酪農への思いをお持ちで、当社のルーツが酪農家であることから、北海道訪問の際には必ずご来訪いただいておりました。また1965年(昭和40年)に当時の皇太子殿下(現上皇陛下)ご夫妻のご意向で開園した「こどもの国※」内の牧場は、当時の雪印乳業株式会社(現 雪印メグミルク株式会社)が建設、国に寄贈して、株式会社雪印こどもの国牧場が運営業務にあたっています。

そうした中で、式典に際し「最高のアイスクリームを」とのご依頼をいただき、当時の開発者は非常に頭を悩ませたと思います。

※こどもの国は、1959年(昭和34年)4月の皇太子殿下(現上皇陛下)のご結婚を記念して、全国から寄せられたお祝い金を基金に、1965年(昭和40年)5月5日のこどもの日に開園した児童厚生施設。

昭和30年代に雪印乳業が製造していたアイスクリーム・カップ。
昭和30年代に雪印乳業が製造していたアイスクリーム・カップ。

ーー宮内庁の依頼を受けてから、2年の歳月をかけ誕生した「スノーロイヤル」ですが、ご存知の範囲で当時の試行錯誤について教えてください。

熊谷:残念ながら企業秘密な部分もあり、当時の資料が何も残っていないのです。
現在の商品開発についてお話すると、嗜好調査や試作などを経て上梓するまでに3年ほどかかります。おそらく当時は何度も試作をお持ちして、ご相談しながら2年の月日をかけて完成したのでしょう。

特徴的なのは「乳のおいしさ」へのこだわりです。乳脂肪分が15.6%と非常に高く、「乳」本来の味わいが感じられるなめらかな口当たり。卵を使用していないので、名前の通り雪のように真っ白なアイスクリームです。

乳脂肪分が高いことから非常に溶けやすく、デリケートな商品で、食感と味わいのバランスには試行錯誤したと思います。

ーー高級感のある口当たりなのに、なんだか懐かしい味です。

熊谷:ありがとうございます。基本の配合や製法などは当時のまま受け継いでいますから、懐かしさを感じますよね。この朴とつとした味に、新しさを感じる方もいらっしゃるようです。

ーースノーロイヤルには、お客さまからどのような反応をいただいていますか?

熊谷:「昭和天皇・皇后様に献上された」というフレーズに惹かれて、ご来店くださるお客さまも多くいらっしゃいます。プレゼントにご利用いただいたり、いただいた方がご自身でご購入いただくなど、非常にリピーターが多い製品ですね。

取材当日は酪農と乳(にゅう) の歴史館・札幌工場※も見学し、酪農と乳業の発展の歴史をレクチャーいただきました。
取材当日は酪農と乳(にゅう) の歴史館・札幌工場※も見学し、酪農と乳業の発展の歴史をレクチャーいただきました。

食を通して、北海道の酪農を感じてもらう

現在では年間20万個(カップ換算)を売り上げるロングセラー商品となった「スノーロイヤル」。雪印乳業から雪印パーラーへと受け継がれ、当時の製法が守られています。「北海道にこだわる」「食にこだわる」 「乳製品にこだわる」ーー雪印パーラーでは3つのポリシーを掲げています。

熊谷:「スノーロイヤル」は、北海道羽幌町のふるさと納税と当社の楽天ショップ経由で、全国各地から手に入れられますが、実店舗での販売は北海道で展開する雪印パーラー自社店舗のみです。各地から卸売のお引き合いをいただきますが、お断りしているのです。

ーーそれはどうしてですか?

熊谷:実際に北海道に足を運び、現地の空気を感じながら味わっていただきたいという強い思いがあるからです。

雪印パーラーの使命は、商品を通して「北海道の酪農を感じてもらう」こと。歴史と由緒ある「スノーロイヤル」への敬意があるからこそ、北海道でしか食べられない、昔も今も変わらないアイスクリームを守りつづけています。

「北海道の酪農を感じてもらいたい」という思いの背景には、雪印パーラーの歴史が関係しています。

熊谷:雪印メグミルクの前身企業のひとつ、雪印乳業のはじまりは、1925年(大正14年)、北海道の酪農家たちによる生産組織「有限責任 北海道製酪販売組合」の設立にあります。

雪印メグミルクのグループ会社である雪印パーラーの前身は、雪印運輸株式会社の食堂売店部門です。創業当時の1956(昭和31)年はまだ、乳製品が広く普及していませんでした。酪農家が立ち上げた会社として「もっと乳製品を食べてもらいたい」との想いから、1961(昭和36)年札幌駅前通りに乳製品を使ったレストランをオープンしました。

ーー私も子供の頃に憧れのパフェが並ぶショーケースを横目に歩いた記憶があります。2017年に移転されましたが、お店の形態は時代に合わせて変わってきたのでしょうか?

熊谷:移転後もお店の形態やメニューのラインナップは、創業当初から大きく変えていません。

札幌では数年ほど前から“シメパフェ”ブームが来ていますよね。シメパフェは、たっぷりのフルーツや、装飾の凝ったものが主流です。一方当社のパフェはアイスクリームや生クリームなど、「乳製品をたっぷり楽しんでもらう、味わってもらう」がコンセプトです。雪印ブランドならではの「乳」へのこだわりで、長年多くの方々に愛され支えられています。

地域とともに基幹産業を盛り上げ、おいしさを守る

製品を通して北海道酪農の価値を届けてきた雪印メグミルクグループ。札幌市とのスポーツ連携協定や道のナチュラルチーズ研修をはじめ、地域と連携したバイオメタンガスの放出量削減への取り組みなど、地域貢献にも積極的です。

ーー地域とともに歩んできた雪印グループですが、今後の展望を教えてください。

熊谷:2025年に雪印グループは100周年を迎えます。酪農家のみなさん・北海道のみなさんに育てていただき、迎えられる100年だと感じています。

北海道の生乳生産は全国の約6割を占める基幹産業です。今後一層の発展を目指し、牛乳・乳製品のおいしさと価値をお伝えしていくのが、私たちの使命だと考えています。

熊谷:雪印パーラーも2026年には、70周年を迎えます。
「スノーロイヤル」を中心に据え、2024年に販売をスタートした「雪印コーヒーソフトクリーム」など、当社の製品をより多くの方に知っていただけるよう、さまざまな施策を用意しています。

「スノーロイヤル」は一度味わっていただければ、ご満足いただける製品だと自負しております。ふるさと納税で「スノーロイヤル」を通して、製造工場のある北海道・羽幌町を知っていただく。そこから巡り巡って、北海道や酪農が盛り上がっていく。そんな循環が生まれていくとうれしいですね。

これからもお客さまの期待を裏切らず、受け継がれてきたおいしさを守っていきます。

誕生から半世紀を超えてもなお、変わらぬ味と想いが受け継がれてきた「スノーロイヤル」には、「北海道の酪農を応援し、未来へ繋げたい」という雪印パーラーの想いが詰まっていました。
北海道の雪のように、やわらかな「スノーロイヤル」。酪農に思いを馳せながら味わえば、おいしさもひとしおです。

Information

株式会社雪印パーラー
〒060-0002
札幌市中央区北2条西3丁目1-31
太陽生命札幌ビル7階
TEL.011-251-3181
FAX.011-221-3619
MAIL.info@snowbrand-p.co.j

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