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北限の地元食材を活かし、スイーツ文化を醸成する オレンジエッグの挑戦。

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北限の地元食材を活かし、スイーツ文化を醸成する オレンジエッグの挑戦。

稚内市事業者の想い

文:三川璃子 写真:小林大起

稚内のお土産店に並ぶ、たくさんの海産物。その中に、ひときわ目を引くかわいらしいパッケージのスイーツが置かれています。稚内の特産物「勇知いも」を使った、ポテラーナワッカナイです。

ポテラーナワッカナイ(写真提供:オレンジエッグ)
ポテラーナワッカナイ(写真提供:オレンジエッグ)

北緯45度に位置する寒さの厳しいこの町では、米や野菜などの農作物は簡単には育てられません。スイーツに活かす食材が少ない中、地元食材にこだわり、稚内の代表となるスイーツを生み出したのがオレンジエッグです。

「ここにしかない素材を、ここにしかない味にすること」ーーその想いを掲げ、一つ一つ大切に商品が作られています。オレンジエッグ代表の及川穣二さんにお話を伺います。

稚内にも美味しいスイーツがある

平日お昼過ぎ。続々とお客さんがお店に入っては、嬉しそうにソフトクリームを手に出てきます。稚内市内にスイーツ店を2店舗構える、オレンジエッグ。今回は本店にお邪魔しました。

ーーオレンジエッグでは、どんなスイーツを作っているんでしょうか?

及川
:人気なのは「ポテラーナワッカナイ」ですね。地元稚内の勇知いもを使ったカタラーナのような商品です。あと持ち帰りのお土産で人気なのは、「ポテマルコ」というじゃがいもクッキー。ポテラーナワッカナイは冷凍品ですが、ポテマルコは焼き菓子なので、お土産店でも人気の商品です。
他にも、隣町の豊富町の牛乳を使ったソフトクリームや、オーダーメイドのバースデーケーキ、レモネードの移動販売もしてます。

ーーひと言でスイーツといっても色んな事業をしているのですね。創業はいつですか?

及川
:株式会社てっぺんとしての創業は2008年で、オレンジエッグというブランドを立ち上げてスイーツ業を始めたのは2010年です。
もともと私、稚内出身ではなくて。妻の出身地が稚内ということで、移住したんです。起業する前は、発電所内のメンテナンスの仕事で苫小牧にいました。足場を組んだり、溶接したりとか、今の仕事とは全く違うことをしてましたね。

当時サラリーマンをやりながら、趣味でホームページを作っていたんです。ご縁で知人のお肉屋さんのホームページを作らせてもらった時に、商品がお客さんに届くことの面白さと、「美味しい」と言ってもらえることにやりがいを感じて。インターネット販売で起業しようと思って、会社を辞めました。

ーーそれは思い切りましたね。どういったものを販売していたのですか?

及川
:最初は、海産物を中心にインターネット販売する事業がメインでした。稚内といえばカニが人気だったので、「ネットでカニを販売できたら面白そう」と思ったのがきっかけです。その後スイーツに目をつけて、地元のお菓子やさんから仕入れた商品を売っていました。厨房のある物件が手に入ったことをきっかけに、自社製造に踏み出したという流れです。

ーー海産物からスイーツへの販売に切り替えるのに、勇気がいるのではと思ったんですが。

及川
:起業した当初から、お菓子作りはしようと思ってました。スイーツって北海道の魅力を伝えやすい食べ物だと思うんですよね。

稚内の隣に位置する、豊富町は酪農がとても盛んです。豊富町の良質なバターや生クリームを使ってお菓子を作れれば最高だなって。稚内はそういった意味でも、お菓子作りに最適な場所だと思って始めました。

「ここにしかない素材」を活かす商品づくり

「地元の食材を使わないと意味がない」と語る、及川さん。ここでしか食べられない味を作るため、稚内の食材を使った商品開発をスタートします。ですが、納得できる商品ができるまでの道のりは、決してなだらかではありませんでした。

及川
:突然ですがちなみに、稚内といえば何をイメージしますか?

ーー稚内はウニやホッケなど海鮮のイメージが強いですね。

及川
:そうですよね。稚内でスイーツ業を始めたのは、そこが理由でもあって。稚内にスイーツのイメージがなかったからこそ、あえてやろうと思いました。しかも、当時は地元食材を使ったお菓子があまりなくて。だから、自分たちはそこにこだわって作れば、スイーツのシェアを広げられると思ったんです。

ーー地元食材「勇知いも」に目をつけたのはなぜですか?

及川
:スイーツ業を始めるなら、絶対に地元の食材を原材料に使いたいと思っていました。なので常に何かないか、市や周りの人に相談していました。稚内だからこそできるお菓子を届けたいという想いが強くて。

稚内といえば海産物。でも海産物とスイーツのコラボはイロモノ的な要素が強くなってしまう。本当に食べて美味しいと思うスイーツを目指して原材料を探しました。

そんな時「勇知いも」が復活したという話を耳にしました。勇知いもは、かつて高級品として人気だった稚内の名産品です。1972年以来生産がストップしていましたが、2008年に復活を遂げました。勇知いもの糖度は約12度。果物に匹敵する甘さです。このじゃがいもなら、スイーツとの相性がぴったりだと思いました。

勇知いも(写真提供:稚内ブランド)
勇知いも(写真提供:稚内ブランド)

ーー勇知いものスイーツ作りで大変だった点や、こだわっている点はありますか?

及川
:じゃがいもらしさを出すことですね。せっかく勇知いもを使うので。ポテラーナワッカナイを試作する段階で、どうしてもじゃがいもの風味を出すことが難しくて、かなり苦戦しました。

試作を重ねて、いろんな人に食べてもらい味の感想を聞きました。そんな時、稚内で蕎麦屋を営むお義父さんから「皮を入れたら風味が出るんじゃないか」とアドバイスをもらい、じゃがいもを皮ごとまるっと使ってみることに。

するっと鼻から抜ける風味にじゃがいも感が出て、やっと追い求めていた理想の味に近づきました。じゃがいもを丸ごと使う工程にもこだわりましたね。一つ一つ蒸した芋の皮を手作業でむき、すりつぶす。むいた皮は乾燥焼きして、パウダー状にしてから練り込む作業に変えたんです。

現在は、市内の障がい者就労支援施設の方々に協力してもらってこの工程ができています。こうして地元の食材を、地元の人たちに助けてもらいながら商品化できるのは嬉しいことですね。

店頭で食べられる「ポテラーナワッカナイBAR」
店頭で食べられる「ポテラーナワッカナイBAR」

ーー実際に駅前の店舗で、ポテラーナワッカナイをいただきましたが、じゃがいものホクホク感があってとても美味しかったです。

及川
:ありがとうございます。商品化も大変だったんですが、ポテラーナワッカナイが店頭に並ぶまでの過程でも苦労しました。

特に大量に製造するのがが難しくて。お菓子作りの知識が豊富な従業員に力を貸してもらったりしましたが、簡単にはいきませんでしたね。1、2個程度の試作ではうまくいくんですが、大量に生産するとなると味を均一に保つことができず。失敗に失敗を重ねて、やっと・・という感じです。商品が完成するまで半年以上はかかりましたね。

ーーポテラーナワッカナイが出来てから、周りの反響はどうでしたか?

及川
:もともと地元食材を使ったお菓子がないという声があったので、ポテラーナワッカナイが商品化された時は喜んでくれる人も多かったですね。

荒波に揉まれながら、稚内スイーツの認知を広げる

スイーツ事業を立ち上げ、試行錯誤を重ねた末に実現した稚内食材を使ったスイーツ。軌道に乗り始めた矢先、思いがけない事態に襲われます。

及川
:創業して1年後。ポテラーナワッカナイの発売と同年の3月11日に起こった東日本大震災で、うちも大きな影響を受けました。ちょうどホワイトデーに向けて約500件ほどの商品を本州に出荷していたんです。ですが飛行機は目的地には辿り着かず。乗っていた商品は全部ダメになりましたね。

ーー自然災害はどうしても避けられないですよね・・。

及川
:注文してくれていた人が、震災で家の被害も受けてしまったようで。避難所から「受け取れなくてごめんなさい」という電話ももらいました。そんなの仕方ないじゃないですか・・。あの時は事業的にも気持ち的にも辛かったですね。

ーーそこからどうやって、ポテラーナワッカナイの売り上げを伸ばしていったのでしょう?

及川
:積極的に市外のイベントに出店したことは大きい思います。旭川の食べマルシェでは、2014年に「ワンハンドスイーツ部門」の大賞をもらって。稚内の食べ歩きスイーツとしてグンと知名度が上がりました。2016年には、食のプロが選ぶ道産食品の「北のハイグレード食品+」にも選ばれて。こうして少しずつ認められきたことがポテラーナが広がってきていると思います。

実際、旭川の食べマルシェでポテラーナを食べてくれた人がわざわざ稚内まで来てくれて。美味しかったという感想までいただいて、本当に嬉しかったですよ。

ーーそれは嬉しいですね。いまはイベントや観光など、各所で新型コロナウイルス流行の影響が出ていますね。

及川
:お土産店で人気だったポテマルコの売り上げは、ガタ落ちしました。稚内に来る観光客が圧倒的に少なくなったのが要因ですね。稚内空港発着便のあるFDA機内サービス品としてもポテマルコが採用され、そこでも認知を拡大させてましたが、便数も少なくなってしまい。配られる数も減ってしまいましたね。

ただ、それでもありがたいことに、ポテラーナワッカナイは勢いを止めず年々売り上げを伸ばしています。ふるさと納税で知ってポテラーナを食べたあとに、直接買いたいと行ってくれる人も。とてもありがたいです。

「ついで」ではなく、「わざわざ」行きたくなる場所に

稚内に移住して13年目。「稚内が人生で1番長く住んでいる場所。かつ1番濃い生活をしている場所」と語る及川さんの姿に、稚内への愛を感じます。地元食材にこだわり、逆境に立たされる時も挫けず稚内スイーツの確立を目指すオレンジエッグ。今後の夢について伺います。

及川:これからは「商品を売る」というよりも、商品をきっかけに「稚内に来る」機会を作りたいと思っています。稚内に来たついでにお店に寄ってもらうのではなくて、「ここがあるから、稚内に行こう」と思ってくれるような場所作りが次の挑戦です。

具体的には、森の中にあるカフェのような場所を構想しています。稚内の自然を楽しめるキャンプやアウトドアもできる場がいいなと思っています。

稚内の西側、日本海に利尻富士が浮かぶように見える場所があるんですけど。本当にいい場所で。

稚内西側に位置する、夕日が丘パーキングからの景色(写真提供:オレンジエッグ)
稚内西側に位置する、夕日が丘パーキングからの景色(写真提供:オレンジエッグ)

夕日も綺麗に見えるし、周りに何もなく落ち着ける場所なんです。稚内が誇るべき場所と言ってもいいくらい、最高のロケーション。そこにポツンとカフェが佇んでいたら素敵だなって。

ーーなぜ「場を作りたい」という想いが湧き上がったのでしょうか?

及川
:オレンジエッグの商品を知って、実際に稚内にわざわざ来てくれるお客さんがいたからです。やっぱり、リアルで「美味しい」と言ってもらえる瞬間が1番嬉しい。商品をきっかけに来てくれた人が、さらに稚内で感動できる体験をしてくれたら最高じゃないですか。わざわざ最北まで行きたくなる、新たな観光スポットになるような場所を作っていきたいです。そのためにはもちろん、引き続き稚内の代表となるスイーツを作り続けていきますよ。

1番大変だったことは何ですか?と伺うと「全てが苦労の日々でしたよ」と、にこやかに語る及川さん。その姿に、苦しさではなく、とても温かさを感じました。朗らかで温かい笑顔を持つ及川さんだからこそ、厳しい道のりでも周りに支えられ、全国に愛されるスイーツが生まれたのでしょう。

店頭のポテラーナは注文が入ってから、グラニュー糖をかけ、バーナーで表面を炙ってくれます。表面は少し温かくて、中はじゃがいものほくほく感があるのに、ひんやり冷たい。新感覚のスイーツに驚きました。馴染みのあるじゃがいもの香りに、優しい甘さがプラスされてくせになる味です。稚内にこだわりぬいた、オレンジエッグのスイーツをぜひ味わってみてはいかがでしょうか?

店舗情報

〒097-0013
住所 北海道稚内市若葉台2-1-4
電話 0162-73-5477
営業時間 10:00〜18:00  不定休(月・火曜日は生ケーキおやすみ)

「稚内ブランド」のご案内

豊かな自然に囲まれた日本最北のまち・稚内市。
地域資源から生み出された名産品や文化、地域資源を「稚内ブランド」として認定し、国内はもとより海外へも地域の魅力を届けています。

こちらの記事でご紹介した「ポテラーナワッカナイ」も「稚内ブランド」認定商品のひとつです。
「稚内ブランド」のWebサイトには、「これぞ稚内!」がぎゅっとつまった商品がずらり。
ロゴをクリックして、ぜひ併せてご覧ください。
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