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真狩の風に乗せて届ける マッカリーナが繋ぐ奇跡のひと皿

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真狩の風に乗せて届ける マッカリーナが繋ぐ奇跡のひと皿

真狩村事業者の想い

文:本間 幸乃 取材・編集:高橋さやか 写真:斉藤玲子

「蝦夷富士」とも呼ばれる羊蹄山の南麓にある真狩村は、札幌から車で約2時間ほど。雄大な自然と牧歌的な景色に溶けこむように佇むのが、深緑色の屋根のレストラン『マッカリーナ』です。木がふんだんに使われた建物に入ると、ホッと息を吐いてしまうほど。まちと食と人をつなげた、風のレストランマッカリーナの物語を、マネージャーの橋本貴雄さんに伺いました。

羊蹄山の麓に風を起こし、根をおろしたレストラン

「マッカリいいな」でマッカリーナ。1997年、自然あふれる真狩村に誕生した初めてのフレンチレストランです。村全体を巻き込んで出来たという『マッカリーナ』は、どのようにして生まれたのでしょうか。まずはそのきっかけから伺いました。

ーーマッカリーナは村との協力のもとスタートしたとうかがいました。立ち上げの背景について教えていただけますか。

橋本
:マッカリーナの代表である中道は、もともと札幌でオーナーシェフとしてフレンチレストラン・モリエールをやっていました。いい料理にはいいお水が必要。羊蹄山の湧水をもとめて、真狩村にお水を汲みにきていたんです。そのうち真狩の野菜も食材に取り入れるようになって。
実は僕は立ち上げには関わっていないんです。マッカリーナがオープンした年の夏に来たのかな。6月にオープンして、僕が来たのが7月。
中道を中心に、村の人たちとプランナーやデザイナー、建築家……それぞれの分野のプロたちがスタッフとして関わって出来た場所だと聞いてるよ。

村人との接点が増えていく中で、中道は「真狩に小さくてもいいから、美味しいフレンチができたらいいな」と、夢を抱くようになったんです。時を同じくして、当時の真狩村長も「村おこし」を考えていました。農業と観光をつなげ、まちを活性化させる策はないだろうかと。
やがて中道の構想に賛同したプランナーやデザイナー、建築家など、それぞれの分野のプロがスタッフとして関わり、村も一体となってマッカリーナが誕生しました。

橋本:羊蹄山から吹きおろす風に、真狩の「食」のモードを乗っけて発信できればいいよね、と「風のレストラン」と銘打って。マッカリーナは、食文化の発信地として、また食の基地として育っていきました。

ーーマッカリーナはレストランだけでなく、宿泊施設も備えていますよね。食だけではなく、真狩を全身で体感してもらいたいという想いもあったのでしょうか。

橋本
:当初はここを「料理人を育てる施設にしよう」というテーマもあったんです。オーベルジュ※ありきではなく「料理人を育てて、その成果を披露できるレストランを作ろう」と。「宿泊して料理の研修ができるように」という構想と、当時の村長の「来賓が宿泊できるようなゲストハウスが欲しい」と言う意向から、今の形になりました。

1997年6月のオープン当時は、まだオーベルジュが珍しかった時代。「宿泊施設付きのレストラン」は注目を浴びて、全国のメディアから取材を受けました。まだ携帯電話が今ほど普及していなかった時代。新聞や雑誌の効果は大きかったですね。今でも「20年以上前の記事をみて、ずっと来てみたかった」というお客様もいらっしゃいます。

※オーベルジュはフランス語で、主に郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストランのこと

「綱」をつり合わせて、空気をつくる

ひとりの夢が次々につながって実現したマッカリーナ。シェフが心を込めて作り上げる一皿とお客様の間を繋ぐのがサービスの役目だと橋本さんは語ります。
実は料理人を経てサービスへと転向したという橋本さん。その背景について伺いました。

ーー橋本さんはマッカリーナで働くまで、どのような道を歩んできたのでしょう。

橋本:
僕は最初、料理人を目指してて。調理学校を卒業して、最初に働いたのが『モリエール』でした。20歳の頃だね。
「フレンチやるなら、フランスに行って本物をみたい」という想いがあって、2年くらい勤めた後にフランスへ。5年ほど海外で過ごして、帰ってきたタイミングでマッカリーナがオープン。中道から声をかけられ、今に至ります。

ーー『マッカリーナ』に来てからはずっとサービスを?

橋本
:そうですね。海外で調理とサービスを両方経験するうちに、自分の中で「サービスの方がしっくりくるな」と。海外の人のサービスって「食べる人も、サービスする人も、楽しい時間を過ごそうじゃないか」という雰囲気があって和やか。店に心地よい空気が流れるように、程よい距離感のサービスをマッカリーナでは大切にしています。

自分が調理をやっていたから、料理人さんの大変さもわかる。「この料理を作るのにどれだけ手間ひまかかるのか」や、素材のことなど、料理人としての視点もサービスに活かされています。お客様に料理についてお伝えする際も、目の前のひと皿に価値をプラスできるような説明を心がけてますね。

サービスって「あいだ」じゃないですか。料理を食べるお客さんがいて、作る人がいて、そのあいだに僕らが立っていて。綱のように、それぞれをうまく釣り合わせる。そんな役割なんじゃないかな。ここはただ食事に来るんじゃなくて、身体を寄せる場所でもあるから。

あとは、真狩は生産者の顔が見えるのも、おもしろいところ。
あ、こういう性格の子がこういう野菜を作るんだな〜とかさ。なんかね、味が出るんだよね。作る人の。やさしい人の野菜はね、やさしい味がしてくるよ。そういう気がする。

かかわった人たちの幸せを思って

「まだマッカリーナはスタートから四半世紀だから」と話す橋本さん。言葉の端々にさらに先をみる想像力と、マッカリーナへの愛情が感じられます。
順調に見える歩みの中、橋本さんにはある「覚悟」があったと言います。

ーー『マッカリーナ』は立ち上げ当初から注目されていて、ずっと順調にみえるのですが、これまで大変だったことは何かありますか?

橋本
:そうですね・・正直、大変はいつも大変なんだわ。ただやっぱり、お客さんに満足とか喜んでもらうための大変さというか。だから僕はそんなに大変とは、思ってないんだよなぁ。なんでも「大変だ」と思ってやり始めると、辛くなっちゃうでしょう。そうは思わないようにしてる。
きっとそれぞれの職に、大なり小なり大変さはあるでしょう。続けてる人は「何か」があるから続けられるんじゃないかな、きっと。僕もそれがあるから続けてるんでしょうね。

ーー「何か」ですか。

橋本
:そう、何か。
僕にとってそのひとつは、自分がやりたくてこの仕事に就いて、いらしたお客様が喜んでくれること。
シェフブースにいる料理人たちの「美味しいものを作って喜んでもらいたい」という想いと料理を届けて、お客さんを喜ばせるという過程もそうです。

さらに遡って考えていくと、20数年前にここを立ち上げた人たちにも想いがあったわけでしょう。その人たちの方がよっぽど大変だったんじゃないかな。僕は彼らが築き上げてくれた上に乗っかって働いてるわけだから。「大変」と思うのじゃなく、お客様にずっと喜んでもらうことで、立ち上げた人たちの想いに応えたいですね。

ここに関わった人にはみんなハッピーでいて欲しい。「やめてぇな〜」って思ったこともあるよ。笑 でも、辛いな、もうダメだな、って思っても、根っこにはそういう気持ちがあるから。ブレないんじゃないですか。

ーー「立ち上げた人たちの想いに応えたい」という気持ちが支えになっているのですね。橋本さんが思う、創業者たちの「マッカリーナへの想い」ってなんでしょうか。

橋本
:「ものづくり」の世界じゃないかな。料理人だけじゃ料理は仕上がらない。素材となる野菜を作った人がいて、漁師さんが釣るから魚がそこにあって。いろんな人が繋いで繋いで、初めて目の前のひと皿が出来上がる。料理人と食に関わる人たちがみんなが繋いだひと皿なんだよね。

ひと皿を作り上げるには、場所も必要です。そのためには建築、デザイン、電気工事、場所を作り上げる人が関わっている。そしてこの真狩村は、北海道を開拓してこの土地を広げて、村を作り上げた先人たちがいたから、今ここに存在しているわけで。

その奇跡みたいな繋がりが連なりあっていって、テーブルの上のひと皿になるんです。

橋本:かたや遠方から訪れたお客様一人一人にも、色んな人生のストーリーがあるんですよね。念願叶って「やっと来れた」って言ってくれる人もいます。

すべてが重なり合った先に、初めて「マッカリーナ」で過ごす時間がある。だからこそ、ここを訪れた人の時間が幸せで満たされるものであってほしい。
たまたま運が良くて僕はその幸せな場にいるわけだけど、それぞれの人生や歴史があって、繋がりあって、今この瞬間と目の前のひと皿があるわけです。

だれかの「第二のふるさと」に

すべてが奇跡のように繋がってきたからこそ、今のマッカリーナがある。今後について伺うと「まずは継続すること。次の世代へ『マッカリーナ』の考えを伝えていきたい」と橋本さん。最後に真狩村への思いを語ってくださいました。

橋本
:お客様の「なんかここ気持ちいいよね」「ここは変わらなくていいね」っていうのが一番のありがたい言葉です。
リピーターも多いですしね。
ふるさとってみんな基本生まれた場所で、一か所じゃない?でも「また行きたいな」とか、「なんか応援したいな」と感じられるような場所に、ここがなれたらいいなと思いますね。真狩に来てくれる人たちにとって、ここが「第二のふるさと」のような場所になってくれれば。居心地のいい場所にしていきたいですね。

ーー最後に。橋本さんにとって『マッカリーナ』ってどんな存在でしょうか。

橋本
:かっこつけた方がいいですか?笑

ーーかっこつけなくていいです。笑

橋本
:なんだろうな・・「不思議な縁」だと思います。僕がたまたま若い頃からやってきたことがシンクロする部分があってね。不思議な縁で過ごしてる場所だなぁって。

僕も村全体から、元気をもらってますしね。羊蹄山を見るとホッとしたりして。真狩に来た当初は、札幌に行くと「帰ってきた」って思ってたんだけど、いつの間にか札幌から真狩に帰ってきたら「ああ、帰ってきた」って。多分、僕にとっても第二、第三のふるさとになったんだなって思います。

これからも真狩村が豊かになって、評判が良くなって、みんなが集まれるような村になれば。その村の発信地としての役割をマッカリーナが担っていけたらと思います。

「みんなが寝ている時に光っていて、夜明けには消えている灯台の生き様っていいなぁって」と、インタビューの最後に少年のような笑顔で語っていた橋本さん。夜を照らす灯台のように静かに周りを見渡す眼差しから、スマートで温かいサービスが生まれるのかもしれません。
羊蹄山の麓に、たくさんの夢と愛がつながって生まれたオーベルジュ・マッカリーナ。ひと皿に込められた想いに、ぜひあなたの想いも重ねてみてはいかがでしょうか。

店舗情報

【maccarina】
〒048-1615 
北海道虻田郡真狩村字緑岡172-3
Tel.0136-48-2100 Fax.0136-45-2241

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